> [!更新履歴]
> 2023/02/04: bloggerに[初版](https://nokinoki23.blogspot.com/2023/02/blog-post.html)をアップ。
> 2023/06/25: Mediumに[改訂版](https://medium.com/@nokinoki/改訂版-日本古典文学を知るための基本文献-古文編-7351c273dd50)をアップ。
> 2025/12/07: ブログ移行につきレイアウト等の調整及び内容の改訂。
> 2026/01/20: 構成を大幅に変更。各項を大幅に加筆修正。
> 2026/01/23: 誤字や変な表現を修正。「手軽に内容を知りたい」項を若干改訂。
---
このページでは日本の古典文学について知りたい・調べたい・読んでみたいという方向けに参照すると良い本などについてまとめている。
これから古典を読んでみようと思う全ての方向けに書いているつもりだが、結果として学部生1~2年生向けになっている気がする。
現役の国語教員や創作活動のために参照したいという向きにも役立つかもしれない。
なお、これを書いているノキは、専門が上代(奈良時代以前)の和歌文学なので、そうしたものに偏っていることは勘弁してほしい。
わからないことなどは直接連絡してくれれば答えられるので、気軽に聞いてね。
---
# まずはここから。信頼できるWebサイト
例えば『源氏物語』について興味を持ったとしたら、現代人(というかこのサイトを見ている人)がまず最初にやってみるのは、インターネットで検索してみることだろう。
しかし、ネット上の日本古典文学に関する情報は玉石混交で、むしろ誤った知識をもたらすものが多いようだ。
特にGoogleのAI要約はアレだし、有名な作品や人であればあるほどWikipediaは信頼できない場合が多い。
この分野に関しては、生成AIに尋ねるのもまだ危ない。
そこで、この項では信頼できるサイトを掲げる。
- **日本文学 Internet Guide**([https://soamano.wixsite.com/nihonbungaku](https://soamano.wixsite.com/nihonbungaku))
非常によくまとまっていて、これで尽きている感がある。
Xの有用な個人のアカウントなども網羅していて、まずはここを訪れて色々と見てみると良いだろう。
- **やたがらすナビ**(https://yatanavi.org/index.html)
こちらも優れている。上のものに比べると、「りぞうむ文学辞典」が便利。
重要事項について簡単ではあるがその概要について知ることができる。
- **国立国会図書館サーチ「リサーチ・ナビ」**(https://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi)
「調べものに役立つ情報を紹介する国立国会図書館の調べ方案内」。
自分の興味のある事柄をどう調べれば良いか迷うと思うので、一度ここを覗いてみると良い。
- **レファレンス協同データベース**(https://crd.ndl.go.jp/reference/)
上記と同じような感じで使えるが、こちらは全国の司書が実際に対応したレファレンスの事例集なので、玉石混交。
面白いので一度見てみると良いだろう。
- **国立国会図書館デジタルコレクション**(https://dl.ndl.go.jp/)
無料で作品の本文を読もうと思ったらここ。
もちろん公開されているものは古いものが多いので読みにくいが、試しに興味のある作品名で検索してみると色々おもしろいだろう。
スマホで読みたい場合は以下のアプリが便利。
→ https://bungaku-report.com/blog/2024/12/-ios-android.html
# 古典文学について知りたい(入門書)
- **『改訂版 プレミアムカラー国語便覧』(数研出版)**
インターネットというかXでは度々国語便覧の有用性が話題にあがるが、買うならこれをおすすめする。
内容をろくに更新していない便覧もある中、これは信頼できる。
ぼくも座右に置いていて、たまに見ている。
- **岩波ジュニア新書**
ジュニアとあるが、内容はかなり高度。このレーベルで興味のある作品や時代、ジャンルのものを探してみると良い。
平安時代の場合は、川村裕子が執筆しているものは信頼できる。
- **渡部泰明『和歌とは何か』(岩波新書)**
著者は中世和歌文学の泰斗。和歌あるいは古典文学の世界ってこういうものなんだ、とざっくりわかる。
参考文献だけでなく簡単な索引も備えるので、おすすめ。
渡部はジュニア新書にも書いているが、そちらは未見のためこちらをすすめておく。
- **渡部泰明『和歌のルール』(笠間書院)**
和歌の修辞技法について詳しく知りたいならこちらもおすすめ。
様々な研究者がそれぞれの項目を分担執筆しているので、前の本より一般的な記述になっている。
- **大野晋『古典文法質問箱』(角川ソフィア文庫)**
古典文法が嫌いな人は多いだろう。古典を知るのに文法は必要ないが、やはり原文を読むのに文法は知っておいて損はない。そういった、文法の基礎を抑えるために。
学校の古典文法に挫折した人にこそおすすめしたい。
特に学校の先生は必読。
- **『古典文学の常識を疑う』I・II(勉誠出版)**
古典文学に興味のない人ほど手を取ってほしい本。学校で教わったあれこれが崩れ、目が開く体験ができるだろう。
執筆陣は信頼できる研究者ばかり。論説文に慣れていないと少し難しいかもしれないが、各トピックは短めなので総じて読みやすい。おすすめ。
その他、作品ごとに入門書がある。興味のある作品名で調べてそういったものを手にとってみると良いだろう。
なお、未見なのだが、**土方洋一『オトナのための古文再チャレンジ』(青簡舎)** は定評がある。手に入れたら改めて紹介したい。
# 作品を手軽に読みたい
個別の作品について、内容を知るために現代語訳を読んでみたい、あるいは原文にチャレンジしてみたいという時に手にとると幸せになれるシリーズを紹介する。
言うまでもないが、定評のあるレーベルだからといって、そのレーベルに含まれているものが全て優れているとは限らない。
校注者・訳者によって方針やクオリティはまちまちである。
ぶっちゃけ本屋さんに行ってみて自分に合うものを買ってみるのが一番満足度が高いと思う。ぜひ本屋さんや古本屋さんに足を運んでみよう!
## 手軽に内容を知りたい
- **角川ビギナーズ・クラシックス**
内容を手っ取り早く知りたい・簡単にでいいからあらすじを知りたい!といった用途ならこれがおすすめ。
わかりやすさを重視しすぎていたり、長い作品は抄出だったりするところもあるけど、まず手にとるならこれがとっつきやすいと思う。
現代語訳だけでなく、少しだけでも原文も見てみたい場合に。
- **『日本の古典を読む』(小学館)**
このシリーズは後に紹介する『新編日本古典文学全集』をよりわかりやすく編集したもの。
有名な場面の抄出で、現代語訳+原文で構成されている。
非常にわかりやすいので、信頼できるテキストがほしい場合はこちらも良い選択肢。
- **東洋文庫/平凡社ライブラリー**
やや古いものが多いが、東洋文庫は注付きで現代語訳をしてくれており、良い。
東洋文庫のものが平凡社ライブラリーに入る場合もあるので、手に入りやすいものを選ぶと良いだろう。
平凡社ライブラリーは面白いアンソロジーが多い。何か知りたいテーマがあって、そのテーマに沿ったものを現代語訳で読みたい場合は平凡社ライブラリーを探してみるのも良いだろう。
なお、東洋文庫は「JapanKnowledge」から利用可能。
その他、現代語訳のみのものとして岩波現代文庫や新潮文庫がある(後者は作品が少ないが)。次項の末尾も参照のこと。
## 原文にチャレンジしてみたい
- **角川ソフィア文庫**
現代語訳をたよりに原文にチャレンジしてみたい場合はこれをおすすめする。現代語訳がついており、注や解説もかなりしっかりしてる。
研究の領域でもソフィア文庫は参照される。
上のものでは物足りない・もっと内容をしっかり知りたいというなら、これがおすすめ。
読みたい作品がこのシリーズにあるかをまず確認するのが良いと思う。
- **岩波文庫**
本屋に行くとこれが目に入ると思うが、これは初心者にはおすすめできない。
作品によるが、古いものは現代語訳がついてない。注もかなり簡素なものが多い。
原文(つまりは古文)でしっかり読める人向け。
ただし、岩波文庫は結構作品にムラがあり、新しく出たものは読みやすいものも多い。
読みたい作品によってはこちらもチェックしてみると良いだろう。
その他、作品によっては講談社文庫、ちくま学芸文庫、河出文庫、中公クラシックスなどからも読みやすいテキストが出ている。
これらもチェックしてみよう。
## 漫画のすすめ
内容を知りたいだけなら漫画版を探してみるのも手。全てはとても網羅しきれないので、知っているものに限って少しだけ紹介する。
- **こうの史代『ぼおるぺん古事記』(平凡社)**
- **井上さやか(監修)『マンガで楽しむ古典 万葉集』(ナツメ社)**
- **吉海直人(監修)『マンガで楽しむ古典 百人一首』(ナツメ社)**
- **小泉吉宏『大掴源氏物語 まろ、ん?』(幻冬舎)**
その他、学習マンガ系だと学研に定評があるが、未見。
大和和紀の『あさきゆめみし』はかつては定番だったが、やや説が古いのと絵柄のなじまなさで今の中高生は読まないらしい(ぼくは何度も読み返した)。
里中満智子『天上の虹』は『万葉集』のマンガ化というわけではなくかなり創作も入っているので、『万葉集』の内容を知るという用途には向かない(もちろんマンガじたいは名作であるが)。
## 複数の選択肢がある場合の選び方
例えば『枕草子』を読もうと思ったら、ざっと検索してみると以下のような選択肢がある。
- 角川ビギナーズ・クラシックス
- 角川ソフィア文庫(川添房江・津島知明訳注)
- ちくま文芸文庫(島内裕子訳)
- 岩波現代文庫(大庭みな子訳)
- 河出文庫(酒井順子訳)
他にもあるが、このくらいにしておく。
こういう場合には、目的別に選ぼう。
例えば、有名な箇所を手軽に見てみたいという場合には角川ビギナーズ・クラシックスが優れている。
頑張って通読してみたい、あるいはもう少し『枕草子』や清少納言について詳しく知りたいという場合には、研究者が訳注をしている角川ソフィア文庫かちくま学芸文庫が良い。
このどちらを選ぶかだが、基本的には見やすさなど好みで選んでいいが、新しいほうが最新の知見が盛り込まれている可能性が高いため、新しいほうを選ぶのも良い。
現代語訳で面白く通読してみたいという場合には、作家が訳している岩波現代文庫か河出文庫かを選ぶのが良い。
それぞれの個性であなたを『枕草子』の世界にいざなってくれるだろう。
ここから読み始め、原文がどうなっているか気になったら研究者のものも買ってみるのも面白い。
基本的に、有名な作品ほど、作家や知識人のものと研究者のものとが見つかるはず。
どちらが優れているとかはないので、自分がどういった目的でその作品を手に取りたいかに応じて選ぶと良いだろう。
もちろん気に入った装丁のものを手にとっても良い。ジャケ買いもまた楽しいものだ。
なお、訳注者がどういった人物なのかは本の奥付など後ろのほうに大体書いてある。
迷ったらここを見てみよう。
# **作品を本格的に読みたい**
もう少し本格的な本文を読みたい、全文を読みたい、あるいは文庫にはなっていない作品を読みたい場合には、全集を手に取ることをすすめる。
以下には古典文学の主要テキストに校訂を施し、注釈を付したシリーズを紹介する。
これらは研究者が一般読者を対象として作ったものなので、信頼度は高い(もちろん作品や校訂者によってはアレなものもある)。
また、解題・解説もその作品に関する基本的な事項をわかりやすく述べていて参考になる。
下手な入門書を手に取るより、こちらからチャレンジしたほうが近道なこともあるだろう。
- **『日本古典文学大系』(岩波書店)**
もう絶版だけど、今でも参照すべき文献の1つ。頭注・本文などからなる。
国文学研究資料館提供「日本古典文学大系本文データベース」(利用制限あり)で全文検索が可能。
**体系**ではないので注意。
古本屋で安く売っているので、ある作品を手元に置きたい場合にも良い。
- **『日本古典文学全集』(小学館)**
これも絶版。頭注・本文・現代語訳の三段組。巻頭のカラーグラビア、本文中の挿絵のおかげで読みやすい。
小学館から刊行された類似の叢書に『完訳日本の古典』があるが、同一内容ではないので注意。
これも古本屋で安く売っているので手元に置きたい場合におすすめ。
ノキは学部2年のとき、これの『万葉集』を買って研究生活がスタートした。
- **『新潮日本古典集成』(新潮社)**
頭注・本文の二段組。二色刷りで読みやすい。サイズは四六版なので持ち運びしやすいのが利点。
全文の現代語訳はないので注意。
上代文学作品は漢字本文がないのが惜しい。新装版が最近出ている。
- **『新日本古典文学大系』(岩波書店)**
本文・解説・脚注からなる。
古い『大系』に比べると近世文学作品が増えたが、上代だと『古事記』・『日本書紀』・『懐風藻』がなくなり『続日本紀』が加わった。
下の『新編全集』に比べると専門家向け。ぼくは結構すき。
- **『新編日本古典文学全集』(小学館)**
頭注・本文・現代語訳の三段組。二色刷りで読みやすい。カラーグラビアがなくなった。「JapanKnowledge」から閲覧可能。
一般向けの最高峰。お金のある方はぜひご購入を。
# 事柄や言葉を調べたい
わからない点について、辞典類をひもとくことがアプローチの基本。
ここでは事柄・言葉・文法に分けて何かを調べるための参考書を紹介する。
なお、辞書類はおのおの独自の編集方針があるため、「凡例」にあたってその辞書の方針を知っておくことが大切。
## 事柄について知りたい
- **『日本古典文学大事典』(明治書院)**
古典文学についてまず調べようというときに出発となる事典。
気になるものがあったらこれでその事柄の詳細を確認しよう。
参考文献が明記してあり、その項目の執筆者名も書いてある。
- **『日本古典文学大事典』6冊(岩波書店)**
明治書院のものと双璧。
こちらも必見だが、個人的に、こちらより明治書院のもののほうが記述がまとまっている気がする。
- **『和歌文学大辞典』(古典ライブラリー)**
和歌のことなら上記の事典と合わせてこちらも必見。
## 言葉を調べたい
### 大辞典
- **『日本国語大辞典 第二版』13冊(小学館)**
古語から現代語まで、現在もっとも大きな国語辞書。改訂版の作成作業が目下続いている。「JapanKnowledge」から利用可能。
ある授業で、先生が「学生のうちに『日国』と『大漢和』を引いたことがない人は不幸だ」と言っていた。
図書館には必ずあるので、見てみると面白い。
- **『角川古語大辞典』5冊(角川書店)**
もっとも規模の大きい古語辞典だが、語釈の要領が悪い気がする。
とはいえ、必須辞書であることには変わりない。
「JapanKnowledge Lib」で利用可能。
- **『時代別国語大辞典』上代編(三省堂)**
ぼくは1つの語について調べるときは、『日国』・『角川』、そしてこれを合わせて3冊は必ず見る。
「上代語概説」や「付録」も必見。
平安時代をやる人もこれは見ると言っていた。
室町時代編というのもあるので、そのあたりの文学作品に興味がある人はそちらを参照のこと。
- **『大漢和辞典』(大修館書店)**
日本で一番大きな漢和辞典。「JapanKnowledge Lib」で利用可能。
内容はやや古く間違いも多い。
一度は引いてみてほしいが、専門家以外は常用はしなくていいかも。
日本文学科の学生は引くこと。
### 中辞典
- **『古語大辞典』(小学館)**
中型の辞典としては最も優れている。語史・語釈が充実。
ノキは最も手軽な辞書として愛用している。
- **『歌ことば歌枕大辞典』(角川書店)**
その名の通り、「歌ことば」や「歌枕」についての表現辞典。和歌に出てくる言葉は上記の辞書類と合わせてこちらも必見。
### 小辞典
- **『岩波国語辞典 増訂版』(岩波書店)**
最もポピュラーな小型辞典。手元に是非。
- **『古典基礎語辞典』(角川学芸出版)**
大野晋の遺作。語が限られている代わりに語史・語釈が充実。面白い解釈が多いが、鵜呑みにするのは危険。
読み物的に見てみると良いと思う。
ノキは高校生の頃これを愛読し、古文っておもしれーと思っていた。
- **『全訳 漢辞海』(三省堂)**
ハンディな漢和辞典としては最も優れている…というか、一般向けにはこれだけでいいんじゃないかとすら思う。
漢字を調べる必要がある方はぜひ。
## 文法を調べたい
- **高校の副読本の文法書**
まずは高校文法をおさらいしよう。高校で使った文法の教科書を手元に置くのがなんだかんだで一番使い勝手が良い。
- **古語辞典の冒頭か末尾についている文法解説の項**
辞典はことばを引くためだけのものではない。下手な本を読むならまずは手元の辞典を見てみよう。
- **小田勝『実例詳解 古典文法総覧』(和泉書院)**
上記を抑えたうえで、より本格的に文法事項を知りたいという場合に。英文法の本のように、各文法項目が体系的に既述されている。
同じ著者による古典文法の一般書も何冊か出ているので興味のある方はそちらも参照。
なお、学校の国語の先生は必携。
* * *
ところで、タイトルに「古文編」とあるのに気づいただろうか。漢文編を企図していたのだが……。ぶっちゃけ漢文は[『デジタル時代の中国学リファレンスマニュアル』(好文出版)](https://www.kohbun.co.jp/%E9%9B%BB%E8%84%B3/%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E5%AD%A6%E3%83%AA%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB/)がよくまとまってるのでこれ見ればいい感があり、未だ筆を執っていない。
ちなみになのだけど、わからないことがあったら、ぜひ地域の図書館や大学図書館の司書に聞いてみよう(=レファレンスサービスを利用する)!
質問はふんわりしているより具体的なほうが良い。
> ✕「源氏物語を読みたいのですが」
> ◯「源氏物語を現代語訳で読みたいのですが、初心者でも読みやすい本はありますか?」
レファレンスを利用するために具体的な質問を考えているうちに、自分が何を求めているかも明確になる。
ぜひ質問を具体的にしてから司書に聞いてみよう。優秀な司書さんは本当に地の果てまで調べてくれる。
公共図書館のレファレンスサービスをたくさん使い実績を増やしてあげることで、司書がただの本の出納係じゃないということも役人に伝わるかもしれない。
メールで聞けることも多いから、まずはHPで調べてみよう。